常識について個人的に過去に大きな出来事があった。
一つは学生時代就職活動の時。
各社訪問してその後にその会社にいる1年から2年上の先輩から話をいただく。
「きみだったら30歳代で課長になり40歳で支店長、そのまま順調なら役員になれるよ」と。どの会社でもほぼそんな調子。
その時、ふと自分の頭に浮かんだのは「先輩もまだ経験したこともないのに何故そんなことが言えるのだろう?」ということだった。
リップサービスであろうしアピールしたい意図も十分汲んでいたが、なにか煮え切らず、結局日本の会社ではなく当時本当に稀だった外資系の会社に入社した。すると周りが「しらないところに行ったね。大丈夫?」「日本のいい会社を蹴ったの?もったいないね」とか「変わってるね。大胆な身の振り方だね」と心配やら疑問やら決して評価する人はいなかった。
ところが数年経ってその外資系はとても有名になりマスコミにも取り上げられるようになると、誰もが「見る目があったね」とか「よくいいところを決めて偉いね」と全く逆の評価を受けた。自分はただ他人の敷くレールで人生を決めたくないと思っただけだったのに。世間の評判や意見ほどいい加減なものはないと感じていた。
もう一つはその外資系を止める時。
入社5~6年経って30歳になる手前。この業界はますます競争が激しくなり、一方将来も見通せない状況でなにか漠然とした不安を抱えていた。
今後のことをじっくり考えるべくリセットしたくなり、また20代最後に悔いのない生き方の証としてチャレンジすることを決めた。
「ヨットで世界を巡りたい」と。
それを理由に会社の上司に辞表をだすと猛烈に引き留められた。
「どうしてなんだ?」「頭おかしくなったか?」と。
そして「今頑張れば40代か50代でリタイヤして、それからでも遅くないだろう」と。
そのときふと再び頭に浮かんだ。「上司もまだ30代じゃないか。なぜ俺の先のことまでわかるんだ?」と。
結局会社を去り2年の冒険の旅にでた。
残念ながら知り合いで40歳や50歳でそんな冒険を果たした人はいない。
そして帰国したときには「よくやった」とみんなから褒められた。
当時大会社や銀行などは潰れないというのが常識だった。そしてバブルで湧いていながら多くは安定な職場を選んだ。今から見れば決して安定なところなどないのに。世間の評判や評価にとどまらず、誰もが常識つまり「当たり前のこと」について深く考えずに明日予測する。「明日も当たり前のことが起きるだろう」と。それで気持ちを落ち着かせたり心のバランスを安定させているのだろう。
会社が低迷したり少なくとも伸びていない状況は、この「当たり前」が大きな原因となっている。
業界の常識を知らない少なくとも会社の常識をしらない私が現場を見て「なぜ?どうして?」と聞くと「みんなそうしているから」「今までそうしてきたから」というさも「当たり前」なことだという答えが返ってくる。私にとって非常識なことが会社では常識となっている。
常識を疑ったり疑問を呈すると反発も起こる。それは心の安定を崩さられるからだ。でもよくよく考えさせてみる。「当たり前」のことが何故当たり前なのか?人は安定が崩されると新たな安定に向けて行動を起こすらしい。行動を起こすことで新たな学習と成長がある。会社の改革はそこから始まる。