前職の時、社員全員と初めて面談をして、「会社に望むことは何か?」と聞いたことがある。そしたら、ほとんどが「給与(待遇)を良くしてほしい」という回答だった。
どんな貢献をしたか?と間接的に聞いても、自分の貢献度合いは横に置いて、自分が発揮できる仕事やポジションではないといった言い訳が口に出てくる。マネジメントの所為だと言わんばかりだ。
そこで、「給与が上がるためには会社はどうあるべきか?」と聞いてみる。するとほとんど回答がない。「どんな会社になってほしいか?」と聞いても同じ。
「友人や自分の子供を入れたいと思うか?そう思える会社とは?」と聞いてみた。するとびっくりしていた。
相手の価値観はなかなか見つけにくい。「人生で実現したいことは?」「仕事で大切にしていることは?」と聞いても即座に素直な答えが返ってくるとは限らない。褒めるでもなく、ただ相手の話に頷いて受け入れ、それがいいとか悪いとかの評価ではなくただ理解を示すと感情が顔色や声に現れる。その時に相手の気持ちを伺えば価値観が見えてくる。
また、人によってモノゴトの捉え方は違う。その捉え方こそ価値観が影響している。感情を引き出し、価値観を探って捉え方を表現する。その捉え方を認めつつ新しい捉え方やもう少し広い視野で捉えることで新たな選択肢に気づく。この揺さぶりこそが前進する行動につながる。
例えば、「これまでどんなことにワクワクしたか?この10年間どのような行動に一番駆り立てられてきたか?没頭したことは?」と問いかける。過去を振り返り、過去の選択の中に自分の内側の欲求について気づく。潜在的価値観が現れる。
そして、過去の自分の選択に対する評価、周りからのその評価はどうか?周りがかける期待と将来の自分への期待は?そんなことを言葉にし始めるとビジョンが見えてくる。
会社のビジョンは、そんな一人一人のビジョンの中で共通項を見つけ、具体的なイメージを描ければ、他人事ではなく、しっくりきた己のビジョンとして受け入れることになるのだろう。
自分の子供を入れたい会社とは?
そこで何を実現したいか?
社員を本気にさせるものが本当のビジョンではないか。